ナンピンという言葉、一度は耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
自分も以前から聞いてはいたのですが、正式な意味は数ヶ月前になんと知りました。。
今回は、ナンピン買いについてと、ナンピン買いは基本オススメしないという話をお届けいたします。
ナンピン買いとは?
ナンピン買いとは、簡潔に言うと自分が持っている株の株価が購入時よりも下がったタイミングに、同じ株を買う行為のことです。
つまりは広義での買い増し、が基本ですが、それに
・自分が既に持っている
・以前買ったタイミングより安くなっている
という条件がついた買い増しが、ナンピン買いと呼んで差し支えないでしょう。
ナンピン買いの例
例えば、イノシシくんが1000円の株を以前持っていたとします。
将来1500円になるだろう!1株1000円で100株購入したぞ!
期待して待っていましたが、株価がいつの間にか下落して、800円のタイミングでこう思いました。
やばいマイナスだ・・・そうだ、今また100株買えば900円までしか上がらなくても損益±0では!?1000円まで戻ったらプラスになるぞ!
チャートでいうと、このようなチャートのタイミングで購入したことになります。
一度目の購入が青、二度目の購入が赤です。
ナンピン買いのメリット:勝率が上がる!
さて、ナンピン買いについて、お分かりいただけたでしょうか?
このイノシシくんの行動、わかりやすいメリットがあります。
それは、「勝率を高められる」という点です。
1000円と800円で同じだけの株数を購入した場合、平均取得単価は「900円」になります。(1000+800)/2=900ですね。
初回だけのままの場合は1000円を超えなければ勝てないのに対し、ナンピン買いをすることにより900円を越えればいいようになるので利益を得られるハードルが下がります。
これだけ見えば、一見良さそうに見えます。
ですが、ほとんどの場合では、ナンピンは最適の戦略ではありません。
ナンピンをオススメしないたった1つの理由
ナンピンをオススメしないたった1つの理由、それは「得られるリターンが悪くなる」からです。
どういうことでしょうか。例えば、先ほどの例で1000円まで株価が戻ったとしましょう。
やった〜!1000円まで戻ったから、平均900円で200株持っていると、100*200=20000円のプラスになった!
しかし、800円に下がる前に、必ず900円や850円を経由します。
ひつじさんは、イノシシくんと同じタイミングで1000円で100株購入しました。
しかし、ひつじさんは青の地点で買った1000円での100株を、900円のタイミングに売ったとします。
1000円で100株持っていたのを、900円で売ったので10000円のマイナスになった・・・
そこから、800円まで落ちたので、200株を購入しました。
1回売ってから200株買ったので、イノシシくんと同じだけ株を持っているよ
イノシシくんと同様のタイミングで、元の1000円にまで戻ってきたタイミングで売ると、当然利益が発生します。
800円で200株買ったものを1000円で売ったので、200*200=40000円の利益が出た!
おさらいしましょう。
イノシシくん:トータルで20000円のプラス
ひつじさん:10000円のマイナス後、40000円のプラスでトータル30000円のプラス
そうです、ナンピンするよりかは、それよりも事前に損切りをしておき、下がった後に買う方が戻った場合のリターンが大きいのです。
(厳密には株の売買には取引手数料がかかり、ひつじさんの方が取引が多いので手数料もより多くかかるのですが、リターンに対し極めて小さい額なので今回は無視します)
ひつじさんの場合、下記のように青の取引と赤の取引を完全に区別しています。800円にタイミングの時点ではこの企業の株を持っていなかったので、ナンピン買いにはなりません。
ナンピンはプライドをお金で買う
さて、イノシシくんとひつじさんの違い、理解していただけましたでしょうか?
わざわざ「自分が持っている銘柄」を安い金額で買い増すというナンピンは、経済合理性がないのです。
先に元々持っていた株を売ってしまい、安い金額で買い戻すのは、上記ひつじさんの例のように全然OKです。
ではなぜ人はナンピンをしてしまうのか?についてですが、これは経済合理性よりもプライドを優先してしまうからなのではないかと推察します。
今後もっと上がると見込んで買った株が、期待に反して下がった場合に、負けを認めたくないという心理が働き、なんとか勝率を高めようとする。そうしてトータルでプラスにさせることでプライドを守ろうとしているのではないでしょうか。
ナンピンは、先ほどのイノシシくんの例では、取引でマイナスになりませんでした。メリットである「勝率を高める」という意味では、一度負けてその後に買ったひつじさんよりも実際に勝率は高いです。
しかし、「勝率を高める」ことが投資の目的でしょうか?
・勝率10割で10%のリターンが期待できる投資
・勝率5割で半分は負けるが、勝った時のリターンが大きいのでトータルで30%のリターンが期待できる投資
上記2種類を選べる場合、どちらを選択しますか?という話です。
一般的な投資の目的では「リターン」が最重要視され、「勝率」は二の次です。
もし今回のようなチャートの動きが起こった場合、一度は素直に負けを認め、予測が違っていたことを反省し、次に生かす方がいいのではないでしょうか。
負けを認めにくくなることにより、次のアクションの改善ができないという点においても、ナンピン買いはデメリットだと筆者は考えます。
例外はある、ナンピン買いしてもいいケース
とはいえ、ナンピン買いが有効なケースもあります。2つのケースを紹介します。
ナンピン買いを行うタイミングが、本当の底だった場合
同じチャートで説明しますが、企業の株価の底が700円で二度と700円まで落ちてこないと仮定します。
この場合、700円のタイミングで売ると、買いのタイミングでは必ず700円以上になり、手数料も考慮すると売って買う方が損をします。
しかし、株価の底がどこかというのは誰もまず予測できないので、正直こうなるタイミングというのは現実味がありません。何かしらの方法で底だとわかったのであれば、いいとは思いますが・・・
中長期での投資を考えている戦略の場合
株式投資で大事なこととして、「どの期間で」「何倍のリターンを期待して」購入したのかをはっきりとさせておくということがあります。
例えば、企業が1200円が理論株価で、それを当初の目論見で1000円のタイミングで購入した場合と、将来10000円になるだろうと見越して、1000円のタイミングで購入するのとでは、全然訳が違います。
後者の場合、将来10000円になるという見立てが間違っていなかった場合、1000円で買ってそれが800円に落ちても、本当に10000円になる自身があるなら買っていいでしょう。
逆に、1000円から下がってしまったからと言って、将来10000円を期待する企業の株を下手に焦って売る理由もあまりありません。それこそ、本当の底でそこから反発して上昇する方がリターンの機会損失になりえます。
このように、中長期で大きなリターンを期待している場合でかつ、その期待が変わらない状況の場合、安かろうが多少高かろうが、買い増すこと自体はリターンに見合っているので、買ってもいいと思います。
まぁこの場合だと、「ナンピン買いをする」というよりかは、「リターンを期待して行動したら、結果的にナンピン買いになった」というケースになります。
おわりに
ナンピン買いとは?というところから、実際にナンピン買いをしたイノシシくんと、買う前に売ってから買い戻したひつじさんの例から、経済合理性のお話をさせていただきました。
また、今回では触れませんでしたが、ナンピンで買った株の株価が戻らずに、さらに下がってしまった場合・・・も当然ながら全然あるので、注意しましょう!